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雑誌Strategic Review寄稿記事 : 森林保護はビジネスにとって有意義

*当記事は、APPの環境担当役員であるAida Greenburyがインドネシアの政策、外交に関する最高レベルの雑誌、Strategic Reviewに寄稿した論文です。



アジア・パルプ・アンド・ペーパー
持続可能性担当役員
アイダ・グリーンベリー


どうしたらインドネシアの貴重な自然林を保護できるのか? これはインドネシアと国際社会双方にとって戦略的に重要な課題だ。インドネシアの森林は、地球上で最も絶滅が危惧されている動植物の生息地である。また、かつてないほどの温室効果ガスの排出により、危険な――おそらく壊滅的な――気候変動の脅威が引き起こされているこのときに、森林が大量の二酸化炭素を貯蔵しているという点は紛れもない事実である。

近年、インドネシアはこうした問題に関する世界的責任を真に理解するようになった。3つの主要対策がスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領により発動され、国民の指標となっている。第一は、2009年に米国ピッツバーグのG20サミットで発表された、インドネシアは2020年までに自発的に温室効果ガス排出を(通常レベルと比較して)26パーセント削減するとの誓約である。インドネシアの現在の温室効果ガス排出は85パーセントが森林破壊と土地利用の変更によるものと推測される、と昨年ユドヨノ大統領は指摘している。

第二は、森林破壊と森林劣化の削減を通じて排出削減を行うとのノルウェーとの同意書に、インドネシア政府が署名したことだ。これはREDD+として知られている先進的かつ革新的な取り組みで、森林保護の経済的枠組みを提供するものである。第三は、ユドヨノ大統領が2011年5月に、原生林とすべての泥炭地を開発する新規ライセンスの発行を2年間停止したことだ。こうした取り組みは森林保護に関して高まる政府の誓約の主要事項に過ぎないが、企業部門をはじめとして、インドネシア社会全体に浸透しようとしている。

林業部門の代表として、またインドネシア最大の紙パルプ企業として、当社がどれだけ政府の戦略を支持できるのか疑念を持たれることも理解している。しかし単刀直入に言って、混交熱帯広葉樹(MTH)として知られる自然林の木材を大量に伐採し続けることが我々の利益になるだろうか? 木材製品としての直接利用にしろ、植林地として土地を開墾するにしろ、自然資源を可能な限り大量に使用できることは、林業部門にとって本当に財政面でより良いシナリオなのだろうか? 最近の試算によると、インドネシアの林業部門の輸出は年間90億ドルに相当し、年間二桁成長を続けている。このような比率で成長を続けている森林部門の能力が、森林破壊を減少させるとの誓約により制限されるのではないか?

当然のことながら、この質問への私の答えはNoであり、その理由は下記の通りである。

持続可能な森林管理は、インドネシアと世界の環境保全にとって非常に重要であると同時に、林業に経済的利益をもたらすものである。管理されることのない、または無責任な土地転換を行えば自然資源の蓄えが枯渇することになり、中長期的には自滅的なことは明白である。今後10年、20年、50年の間で世界経済の中心的勢力になろうとしているインドネシアの企業にとって、これは由々しき事態であろう。私見ではあるが、重要な問題として指摘しておきたいのは、インドネシア政府と林業部門は近代産業が形成された1960年代からこの事実を認識しており、それ以降、関連規制をインドネシアの非常に価値ある保全林を保護するために極めて高度なシステムへと進化させて来たという点だ。1986年、インドネシア政府は産業植林地の管理を規制する初の法律を発布した。この法律は、保護林ではなく、非生産的な伐採跡地や荒廃地のみが植林地として転換されるように策定されたものである。

現在の規制は2004年に導入されたもので、より多くの保護価値の高い土地を保護除外するための、環境アセスメントおよび要求事項に関する一連の規定である。この法規は現在も有効であり、存在する可能性のあるすべての高い保護価値を保護するため、インドネシア政府は、環境負荷アセスメント;マクロ区画設定評価;ミクロ区画設定評価という、三つの環境および社会アセスメントを要求している。こうしたアセスメントを通じ、保護価値の高い森林を保護するための国の義務手順が特定される。すなわち、商業林コンセッションは基本的植生に基づいて細分化され、商業林開発用として選ばれた土地の中に保護および除外されるべき保護価値の高い森林がないか特定するのである。現在の法規は、いかなる植林地コンセッションも、少なくともその30パーセントを保護のために除外されなければならないとしており、それ以上保護するかどうかは企業の選択に任されている。

多くの経済的、政治的、社会的に非常に困難な時代を経て森林法規をこのように発展させてきたことを、インドネシアは誇りに思うべきである。しかし、森林破壊の削減に関する新たな誓約を支持する二つ目の主な理由は、我々が順守しているものよりさらに高い基準を国際的パートナーが求めていることを、インドネシアは認識しなければならないからである。具体的に言うと、影響力の大きな森林管理評議会(FSC)により採択され、HCVネットワークという国際機関により維持されている、国際的に認められた保護価値の高い森林(HCVF)の定義である。下記はこのネットワークが定義する基準だ:

「保護価値の高い(HCV)地域とは、極めて重大または決定的な重要性があると見なされる価値を有する自然の生息域と定義されている。HCVアプローチを利用する鍵は、高い保護価値の6つの定義である。この定義はさまざまなステークホルダーグループが共有する保全優先事項の範囲を対象とするもので、社会的価値や生態学的価値を含んでいる。保護されるべき、あるいは保護されることが肝要なのは、こうした価値である。保護価値の高い地域とは、こうした価値が確認された地域(例:森林、草原、水域、景観レベルの生態系)のことであり、具体的には、特定された価値を維持または強化するために適切に管理されるべき地域のことである。つまり、こうした価値が存在している地域の特定は、その価値の適切な管理を推進していく上で最も重要な第一歩である。」

HCVF基準は強固かつ科学的なものであり、保護価値の高い地域が長期にわたり保護されることを保証する管理システムを決定的に提供している。森林管理評議会に採用されているHCVF原則が、森林保護に関する優れた基準の代表として国際的に利用されているのはこのためである。これは生産者やブランド所有者、消費者に対し、製品が世界のどこにあっても、持続可能な方法で管理されている森林に由来することを保障するものであり、そのため、家具からトイレットペーパーに至るあらゆる製品にFSCラベルがついている。

まだ未成熟な林業部門を持つ、インドネシアのような発展途上国にとって唯一の障害となるのは、FSC規則書にある次の一項目のために、多くの植林地由来製品(紙パルプなど)がFSCを取得できないという点である。

「FSC基準に即して認証を取得できるのは、FSCの原則と基準が合意される1994年以前に設立された植林地、あるいは荒廃地に設立された植林地(森林再生)、または農業用途の代替として設立された植林地のみである。」

実際問題として、関連する環境または持続可能な森林管理などすべての要素に関わらず、インドネシアの多くの植林地は1994年以降に設立されているためにFSC認証の資格がない。このルールは議論の余地があると考えられている――数世紀とは言わないまでも、数十年前に林業が構築された、欧州や北米に競争上の優位性を与えているように思えるのだ。現在このルールが森林管理評議会によって見直されているのは、おそらくこうした理由によるものだろう。私が訴えたいのは、インドネシアでの持続可能な森林管理の発展に関心のある人はすべて、この1994年ルールの撤回を望んで然るべきだということだ。その一方で、多くの国際市場で操業を行っており、欧州や北米の競合他社と戦える対等な立場を必要としているアジア・パルプ・アンド・ペーパー(APPのような企業にとっては、困難な問題である。

APPの解決策は、FSCが規則を変更するまで待たないということだった。我々は当社の生産設備全体でHCVF基準の実践と監視を行うため、見出すことができる世界中の最善のパートナーやコンサルタント、評価機関と共に、自主的に取り組んでいくことを決意した。APPは所有する108万2,934ヘクタールのパルプ材コンセッションにHCVF原則を直ちに適用し、貴重な保全地域が特定されるまで、さらなる自然林の伐採を停止しようとしている。この評価では、こうしたコンセッション内にある未開発地域――全面積の約50パーセント――に特に焦点を当てていく。その後、計155万8,731ヘクタールを管理している独立系供給会社に対しても、新HCVF原則を受け入れるよう要請していくことになる。当然のことながら、彼らの独立性を考慮すればより長い時間がかかるが、我々はその順守に2014年末までの猶予期間を与えている。独立系供給会社はインドネシアの貧困地域で操業していることが多く、方針転換によるそうした地域の住民への影響評価を考慮することは非常に重要である。

理想的な筋書きは、当社のHCVF評価が完了するまでにFSCの規則書が変更されることである。そうなれば、APPはインドネシアにある林業部門の他の主要企業と共に、当社植林地のFSC認証を申請することができる。たとえこれが実現しなくとも、HCVFと当社の「2020年とその先に向けた持続可能性ロードマップ」に記載された誓約を推し進めることを我々は決意している。

持続可能性は、急成長するインドネシア企業の障害ではない。当社の事業の推進にとって不可欠なものであり、より高度な環境基準と同時に未来の経済成長をもたらすものである。当社の事業が、顧客が、インドネシアという国が、これを求めている。我々はこうしたすべてのことに対する責任を引き受けると決意しているのだ。世界的経済大国となり、気候変動など重大な環境問題に関するリーダーになるという二つの目標をインドネシアが追求している今、APPは企業部門でこの最も重要な問題に関する対話と協力を促して行きたい。わが国とそれを取り巻く世界にとって真に持続可能な未来へと向かう過程では、林業部門の内部でも外部でも、互いに学び合うことは数多くあるのだから。





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